感染学校~死のウイルス~
「頼経先生はまだ校内にいるんですか?」


空音がそう聞くと、辻本先生は少し目を見開いて空音を見た。


「あぁ、そうか、あれだけ破損していればな……」


ボソッと呟く声が聞こえてきて、あたしは思わず足を止めた。


『あれだけ破損していればな』


その言葉が意味するものなんて、1つしかない。


頼経先生はきっとあの職員室の中にいたのだ。


顔がわからないくらい、攻撃されていたからあたしたちが気が付かなかったのだ。


あたしは空音の手に握られているスタンガンへ視線をやった。


スタンガンを出す暇もなくやられてしまったのだろうか?


それとも、攻撃がきかなかった?


あたしは自分が持っているバッドへ視線を向けた。


こんなもので撃退できるのかどうかもわからない。


思えば、感染した生徒たちは性別問わず、拘束されていたロープを引きちぎっていたんだ。


もしかして発症後殺害願望まで到達すると、人間では太刀打ちできないほどの力を発揮するんじゃないか?


そんな考えが浮かんでくる。


バッドを持つ手にジットリと汗が滲んできているのがわかった。


「頼経先生は今日は休みだから大丈夫だよ」


辻本先生はそう言い、笑顔を向けた。


頼経先生が休みなら、私物のスタンガンが職員室にあるはずがない。


その矛盾に気が付かず、空音はホッとしたように「よかった」と、ほほ笑んだのだった。
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