秘めた想いが実るとき
「今日はもうあがらせてもらった。唯香を一人帰すのが心配だから」
ズルイよ。
こんな時に名前で呼ぶなんて。
お酒で火照っていた顔がさらに熱を帯びる。
朔斗の優しさに触れるたびに胸が高鳴る。
私は朔斗に恋をしている。
でも、私は身の程を弁えているつもり。
それに、朔斗のポリシーの“客とは付き合わない”っていうのがあるし。
「ホラ、行くぞ」
私の手を握り歩き出す。
もう、私の心臓は飛び出そうなぐらいバクバクいってる。
「ど、どうして手なんか繋ぐの?一人でも歩けるし」
これはせめてもの強がり。
本当は嬉しくて仕方がないんだ。
「お前、真っ直ぐ歩けてないだろ。手でも握っとかないと転んで大怪我するぞ。それに、お前に何かあったら和也さんが文句を言いに来そうだからな」
冗談混じりに言う。
だけど、私には一気に酔いが覚めそうな言葉だった。