秘めた想いが実るとき
朔斗が私に優しくしてくれるのはお兄ちゃんがいるからで他意はない。
朔斗は私のことなんて何とも思っていない。
お兄ちゃんのお陰で朔斗と出会えたから感謝しなくちゃ。
だって、私がお兄ちゃんの妹じゃなければ、こうして送ってくれるようなことはしてくれないと思う。
だから、自分の都合のいいように勘違いしなきゃと言い聞かせる。
朔斗が車を停めている駐車場に着いた。
「なぁ、辛いなら辛いって弱音を吐いていいんだぞ。ギリギリまで我慢することはない」
車の助手席のドアを開けてくれた時、朔斗がボソリと呟く。
私が会社の人間関係で悩んでいることを知っているから、そんな風に言ってくれるんだ。
それはちゃんと私のことを見ていてくれるからだよね。
「うん……ありがと」
助手席に座り、シートベルトを締める。
朔斗は運転席に座りエンジンをかけ、車を走らせた。
車内では特に話すことはなく無言だったけど、居心地は悪くなかった。
気持ちが弱っている時に朔斗の優しさは沁みてくる。
それと同時に弱音を吐いてもいいんだと言ってもらい、私の中にひとつの思いが浮かんだ。