秘めた想いが実るとき
憂鬱な火曜日
「はい、牧村ファミリー歯科です」
『もしもし、何か急に歯が痛くなったので診てもらいたいんですけど』
「いつ頃がよろしいでしょうか?」
『今日中は無理ですかね?』
「今日ですか、少々お待ちください」
パソコンのマウスをクリックし、今日の予約リストを確認する。
時間ごとに区切り、予約者の名前を入力している。
空いている時間は、と。
「今日でしたら、十八時以降ならどの時間でもお取りできますけど」
『じゃあ、十八時でお願いしてもいいですか?』
「分かりました。お名前を教えていただいてもよろしいですか?」
「えっと、斉藤です。斉藤加奈子」
名前を聞いて、ペンでメモ用紙に記入する。
「斉藤様、では十八時にお待ちしています」
受話器を置き、そのままパソコンに名前を入力し、カルテを探す。
一度、診察に来たことがある人のカルテは五年は保管してある。
あいうえお順に保管していて、サのところを片っ端からチェックする。
「斉藤、斉藤っと」
見つけたカルテを透明なファイルに挟み、今日の予約者のカルテを置いている棚にしまう。
一息ついていると、ふと、昨日のお母さんからの電話を思い出した。