秘めた想いが実るとき
卒業した先輩は、会える時間をちゃんと作ってくれた。
デートしたりいろんな話をして、ぎこちなかった二人の距離を徐々に縮めていった。
順調に付き合っていたんだけど、私が県外の大学に進学することになった。
りっくんは県内の大学に通っていて、このままだと遠距離恋愛になってしまう。
二人でたくさん話し合ったし、涙も流した。
出した答えが、お互いのことを考え、別れようというものだった。
前向きな選択で、後悔はしていない。
一年の付き合いだったけど、楽しい思い出をたくさん作ることが出来た。
初めてデートして、初めて手を繋いで、初めてキスをして、初めて身体を重ねた。
私の初めては全部、りっくんだった。
そんなりっくんが、成長して目の前にいる。
何だか不思議な気分だ。
「それにしても、唯香は綺麗になったな」
目を細めて私を見つめる。
「ホントに?てか、りっくん私のことすぐに分かったっていうことは昔と変わってないってことでしょ。それって何か微妙だなぁ」
あれから十年も経っているのに変わっていないなんて、喜んでいいのか分からない。
もうすぐ三十路、それなりに年を重ねてきてるはずなんだけど。
「昔は可愛かったけど、今は大人の色気が出てるよ」
私が拗ねたように言ったので、りっくんはクスクス笑いフォローしてくれる。
こんな優しいところや、サラリと可愛いとか綺麗と言えるところは変わっていない。