秘めた想いが実るとき
「笠井さん、ちょっと出てきます」
「お、買い出しか。頼む」
カウンターの奥から出てきたのはここのバーテンダーの朔斗。
腕捲りし、第二ボタンまで開けた黒シャツ姿。
かなりの長身で立っているだけで威圧感がある。
しかも、それを増長させる眼光鋭い切れ長の目に、デザインされた顎ヒゲ姿。
顔自体、整っていて鼻筋も高いし、いわゆるイケメンと言われる部類の人間だ。
あと、指が長くて綺麗なんだ。
爪も綺麗に切り揃えてあり清潔感がある。
その手でシェイカーを振る時、思わず魅入ってしまう。
朔斗は大人の魅力を兼ね備えた男性だ。
パッと見、無愛想な感じがする。
だから大抵の人は最初は怖いという印象をもつ人が多い。
でも、話してみると意外と面倒見のいい人だということに気付く。
私もその中の一人。
朔斗目当てで来る女性客も少なくない。
何度か言い寄られている場面を見たことがあるけど、朔斗にはポリシーがあり、毎回やんわりと断っている。
「おい、浮かれてあまり飲み過ぎんなよ。前科があるし、いい年なんだから次の日に響くぞ」
ポン、と私の頭に手を置いた後、ドアを開けて外へ出て行った。
は?いい年って……。
その意味を理解するのに数秒かかった。
飲み過ぎるな、だけでいいでしょ。
別に浮かれている訳じゃないし!
ホント、一言多いんだから。
朔斗が出て行ったドアを睨みつけた。