秘めた想いが実るとき
「唯香はどうなんだ?」
「私?そんな予定は全然ないよ。だからお母さんにお見合いしろって言われて」
「えっ!唯香、見合いすんのか?」
つい口が滑ってお見合いのことを話してしまい、りっくんが驚いて大声を出す。
その瞬間、バーに来ていたお客さんの視線が私に集中する。
「ちょっとりっくん、声が大きい」
「悪い悪い」
恥ずかしくて身体を縮める。
今の話、朔斗にも聞かれちゃったかな?
チラリと視線を向けると、気にも留めない様子で穏やかに笑いながら女性客と話をしている。
それを見てホッとしたのと同時に、モヤモヤが胸に広がる。
「そうか、見合いかー」
りっくんは腕組みをしてしみじみ言う。
「本当はお見合いなんてしたくないけど、親に紹介できる彼氏がいないからね」
「じゃあ、俺が彼氏になろうか?」
「えっ?」
突然の申し出に驚き、まじまじとりっくんの顔を見る。
「唯香は今フリーなんだろ。俺もフリーだし、ちょうどいいと思うけど」
そっか、りっくんは今は彼女がいなのか。
いやいや、今はそんなことは置いといて。
「それはそうだけど……」
言葉に詰まる。
まさか、そんなことを言われるとは思ってもいなかった。
お見合いはしたくない。
りっくんが彼氏になってくれたら、お見合いを断れる。
だけど、私の好きな人は……。