秘めた想いが実るとき
普段よく見る、バーでの服装ではなくスーツ姿の朔斗がそこにいる。
何が一番違うかって、顎ヒゲがない。
スッキリとしたフェイスラインで、何だか別人に見える。
朔斗もこのカフェで待ち合わせでもしているんだろうか。
そんなことを思っていたら、私の座っている席で足を止める。
朔斗を見上げるとバッチリと目が合い、フッと頬を緩め口を開いた。
「ちゃんと来たんだな」
「えっ?」
全く意味が分からない。
呆然としている私をよそに、朔斗は私の前の席に座る。
一体何がどうなっているの……。
どうしてそこに座っているの?
「何だよ、そんなアホ面で」
私の顔を見て鼻で笑う。
いやいや、アホ面にもなるでしょう。
朔斗がここにいることが理解できない。
もうすぐ私のお見合い相手が来てしまう。
鉢合わせになるとか、そんなのは嫌だった。
「どうしてここに?私、今日はお見合いなんだけど」
ようやく絞り出せた声で質問した。
「知ってる。俺がお前の見合い相手だから」
朔斗はサラリと爆弾発言を投下した。
え、朔斗が私のお見合い相手?
「嘘だ……」
「そんなことで嘘つく訳ないだろ。ホントだよ。俺が唯香の見合い相手の小林朔斗」
もう何が何だか分からない。