秘めた想いが実るとき
「柚ちゃん、今日は一人かい?」
「いえ、待ち合わせをしているんですよ。音波ちゃんと」
「そうか。例の彼氏を連れてきてくれるのかと思ったのに」
「葵ですか?また、今度一緒に来ます。ところで、笠井さん隠居するって小耳に挟んだんですけど嘘ですよね?」
「いや、本当だよ。俺も年だし、あとは朔に任せようかと思ってな」
「えー、寂しいです」
「はは、そう言ってもらえて俺も嬉しいよ。まぁ、隠居してもたまには顔を出すつもりだから」
「ホントですか?約束ですよ」
そんな会話が聞こえてきた。
なんだ、あの子には彼氏がいるのか。
って、何盗み聞きみたいなことをしているんだろう。
一人だと話す相手がいないので、自然と他のお客さんの会話が耳に入ってくる。
私的には聞くつもりは全くないんだけど。
今日は結婚式で早起きしたからか、さっきからあくびが出ている。
何だかんだ疲れたので、そろそろ家に帰って寝よう。
私は残っていたジンライムを飲み干し、席を立つ。
支払いを済ませてバーを出ると、おとなしく家路についた。