飛べない翼
「沙羅君。少しは前向きに考えないか? こうして新しい先生になったんだから、自分から前に進んでみようとは思わないのかい? それでは……」


「あー、院長先生」


院長先生の長々しいお説教を遮ったのは、驚くことに新米先生の声だった。


「彼女の過去は前任からの申し送りで見て殆ど覚えているつもりですが、そんな諭し方では意味ないですよ」


「君は……何が言いたい?」


少し苛立った院長先生の声音が響く。
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