飛べない翼
暫く行くと、窓越しに中庭が見えてくる。


中庭と言っても、殆ど人は居ない。


この病棟に居る人の殆どが心を病んだ人達で、そんな人達が外に出たがる訳もなく、人の声すら聞こえてこない。


新米は木陰のベンチに私を座らせると、自身も隣に腰を下ろした。


「ほら、今日は日差しがとても気持ちが良いでしょう?」


そんなことを言って空を仰ぐと、新米は目を細めた。


(……新米って、本当に男……?)
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