谷穴町のよろず屋
「キモイんだよっ!!」
バシャッ
少し肌寒くなってきたせいか、この前まではなんとも思わなかった行為に少し苛立ちを感じた。
(…………今日中に制服乾きますかね?)
薄氷白無(うすらいしろな)はずぶ濡れになった制服を見ながら、1限目の欠席を決めた。
水をかけられたままぼぅっと突っ立っていると、この行為の主犯格であろう女が勢いよい前髪を鷲掴み自分の方へと引っ張ってくる。彼女は小柄で165センチの自分とは約10センチ低いので少々腰が痛い。
「………なんか喋りなよ。いつも突っ立ってばかりでキモイんだけど!」
学校一可愛いと評判の顔で平気で毒を吐く。周りで見ている男女も自分を助けようなんて気は毛頭なく、その目はきみ悪く笑っている。
「……ちっ。後は、ボコっといて」
白無が無言を貫いていると、飽きてしまったのか彼女は取り巻きの女を引き連れて教室に戻っていく。彼女はどんなに白無をいじめても授業には必ず出る。彼女の好きな人は成績優秀でクラスの優等生だ、少しでも自分の印象を良くしたいのだろう。
(どうせなら残ってる取り巻き[男]も連れていってくれればいいのに………)
彼女に惚れているだろう彼らは、彼女に少しでも気に入られたいらしくこういうことには異常に勢力的だ。
(まぁ、そのおかげで私は暴力だけですんでいるんですけどね)
白無は自分の顔面まで迫った相手の拳を見ながら一つため息を吐いた。