グリーン・デイ





 8:00を回ったころ、僕は家には帰らず、車を琵琶湖に向けて走らせていた。



 車を駐車場に止め、川沿いの道を歩いた。月は満月で、六月の終わりにしては風が心地よかった。



 ふと、傍に大きな木が目に入った。なんという名前の木かはわからなかったが、見覚えがあった。



 なぜか、この木、この場所を僕は覚えている。



 木に駆け寄って、手で触れてみた。ごつごつとして、頼もしく幹の太い木で、きっと僕が生まれるよりも前からこの場所で琵琶湖を眺めていたんだろうと思う。



 そして、この木はきっと僕を知っている。手で触れた瞬間、僕に「久しぶりだね。」とか「大きくなったね。」と語り掛けてくるような気がして、そんなわけがないのに、僕はその呼び声に、



「お久しぶりです。」



 そう返していた。




< 114 / 136 >

この作品をシェア

pagetop