グリーン・デイ





「それで、生きてるの?」



「この通り、生きてるさ。」



「それはよかったわ。生きていてくれなきゃどうしようかと思ったわ。」



「今どこにいるんだ?」



「それはこっちのセリフよ。私は今、三鷹にいるの。そこで今月、独立してジャズ喫茶を開く予定なの。資本金500万円とほんの少し両親から借金してね。私が経営者よ。コーヒーの淹れ方はもちろん、経営も少しは学んだし、接客も難なく熟せる自信があるわ。ただ、どんなに頑張っても私には出来ないことが一つあるの。肝心のジャズよ。あなたギター弾けるわよね? どう? 私とこじんまりしたジャズ喫茶で残りの人生送ってみない?」



「それは口説いているのか?」僕は嘲笑するように言った。



「あら。こういうことは、あなたが言うべきセリフなのよ? 私にこれ以上恥をかかせるあなたは、最低だって世の中の女子はみんな口を揃えて言うでしょうね。でも、私はそうは思わない。そういうあなたが好きだもの。」



「ジャズか。ちょうど京都でもらったギターでジャズを始めたところなんだ。」



「あら、偶然というか、運命というか。」



 僕はケータイを左手に持ち替えた。



「キミは僕に居てほしいかい?」



「あなたこそどうなのよ?」



 苦笑いが止まらない。



「居たいとも。」



「私も。」




< 124 / 136 >

この作品をシェア

pagetop