グリーン・デイ
「僕に女装癖がありそうに見えるか?」
「人は見た目じゃないのよ?」
「僕は遠回しに女性ものの下着なんて持っていない。そう言っているんだよ。」
「あらそうだったの。でも、意外だったわ。私を一目惚れさせた男なんだから、連れ込んだ女の忘れた下着くらい持っててもおかしくないなって。まあ、過去の女の下着を履くのは多少、引けるのだけど……。」
「だから持っていない。」と答えた。
「それならしょうがないわね。あなたのパンツを今晩だけ貸してくれないかしら? 明日はどうせ講義もないし、ここへ来る途中にコンビニもあったから下着と生理用品ぐらいあればなんとかなるでしょう。」
アヤカは身体を拭き終わったバスタオルをそのまま頭に被せ、部屋にあるカラーボックスを勝手にごそごそと漁り始めた。
「あら、これ穴が空いてる。」
僕に年季の入ったパンツを広げて見せた。
「捨てるか縫うかしないと……あ、それともこのパンツには何か思い入れがあるとか?」
アヤカからパンツをひったくり、その透き通った裸が見えないようにカラーボックスから黒のトランクスを引っ張り出して、投げつけた。
「ありがとう。お借りするわね。」
「何だか僕はキミと出会った時よりもキミのことが嫌いになりそうだよ。」
「それは少し悲しいけれど、私はありのままに接しているつもりよ? だから、この先結婚したとしてもあなたが驚くことは、幻滅じゃなくて、その逆の方が多いと思うわ。あ、ついでにスウェットか何か寝巻になるようなものない?」
「あるにはあるけど。」と言って、カラーボックスからグレーのスウェットを取り出し、振り返った。ちょうどアヤカは僕のトランクスを履いているところだった。
油断した。