グリーン・デイ
僕は6畳半の部屋にあるベッドで、アヤカはダイニングに置かれたオレンジのソファーにタオルケットを掛けて寝ることになった。
「僕がソファーで寝るから、ベッドを使ってくれ。」と頼んだのだが、気を遣ってか、頑なに断られた。気を遣うところが少し違うような気もするが、本人がそれでいいと言うのならいいのだろう。
「ねえ、まだ起きてる?」
引き戸を隔ててアヤカの声が聞こえた。僕は「起きてる。」といかにもめんどくさそうに答えた。本当はくたくたに疲れていて、一刻も早く眠ってしまいたかったのだが、どうも引き戸の向こうにアヤカがいると思うと、意識してなかなか寝付けなかった。
「欲を言うとね、本当はあなたと同じベッドで寝たいの。でも、あなたはきっとその申し出を断るでしょうね。」
「当たり前だ。」そう答え、続けた。
「僕はいろんな意味でキミを信頼していない。それにシングルベッドに二人で寝るなんて、それこそキミを好きだと認めたことになるじゃないか。」
「確かにそうよね。でも、私があなたの横であなたの寝息を首筋に感じながら眠りたいって思ったのは、何もあなたに信頼されたいとか、傍に居たいとかじゃないの。いや、信頼とまではいかなくても、信用くらいはされたいし、傍にも居たいんだけどね。でも、隣で寝たい真の目的はそこじゃないのよ。」
僕は枕から頭を上げて時計を見た。蛍光塗料の塗られた短い針が12、長い針が11のところを示していた。