グリーン・デイ
再び空腹感が思い出したように襲ってきて、冷蔵庫から卵とハムを取り出した。それを狭い調理台に置き、電子レンジの上に置かれたトーストを二枚、カウンターテーブルに置いてあるオーブントースターに突っ込んだ。それからワンルームとを隔てている引き戸を軽く開け、アヤカに「朝飯食べる?」と訊いた。
「頭が痛い……酷い鈍痛がするの。私、生まれてこの方、カクテルというものを飲んだことがなくて……スコッチなんて大見得切ったこと言ったけど、スコッチがどういうものか知らなかったの。どんな色をしてて、口当たりがどうで、どういう風に飲めば美味しいのか。もちろん、スクリュードライバーも知らなかった。ただ、飲みやすかったからつい、ガブガブ飲んでしまったけれど、これがカクテルの代償なのかしらね。お酒に飲まれるっていうのは、このことを言うのね。」
僕は思わず笑ってしまった。アヤカはそんな僕を名乗る前の新聞勧誘員を見るような目で見た。
「スクリュードライバーって言ったけど、あれ、ただのオレンジジュースだから二日酔いじゃないと思う。」
それを聞いたアヤカの表情がみるみる鎖から解き放たれていくのがわかった。
「頂くわ。」