グリーン・デイ





「回転寿司でただ寿司を食べるだけに行くんだよね?」



 僕はそう訊いた。



「そうねえ。できれば、帰りにブラを買って帰りたいけど……お寿司は苦手?」



「いや、どちらかと言えば好きだな。むしろ、好物と言ってもいい。好物だからよく友達と回転寿司に行く。でも、それだけじゃつまらないと思うんだ。キミはどうかわからないけど、食事っていうものはもっと楽しいものでなくちゃいけない。ただ黙々と食べるだけなんてまるで冷めきった熟年夫婦のようじゃないか。だから、僕は考えた。寿司屋のはしごをしたらいいんじゃないかって。」



「はしご? お寿司屋さんの食べ歩きってことかしら?」



「そうだ。」僕は続けた。



「いろんな寿司屋に行って、それぞれ1皿だけ食べるんだ。それを味わって食べて、食べ終わったらじゃんけんをする。ここの支払いをどちらがするかを決めるためにね。じゃんけんで負けたほうが支払いをして、次の店に行く。そこでまた1皿だけ食べてじゃんけんをする。それをお腹が膨れるまで繰り返す。どうかな?」



 アヤカは「楽しそう。」とも「いいね!」とも言わず、ただ一言、



「私の目に狂いはなかったわね。」



 と微笑んだ。




< 39 / 136 >

この作品をシェア

pagetop