グリーン・デイ





 アヤカは、数時間後にケロッとした顔で帰ってきた。



「ただいま。」



「おかえり。」



 僕はギターをスタンドに戻し、冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し、コップに注いでいるアヤカに「どこへ行っていたのか?」と尋ねた。



「バイトの面接よ。」



「バイト?」



「そうよ。アルバイトよ。」



 僕が一年かかっても使いきれないくらいのお金を財布に入れて歩いているにもかかわらず、アヤカはアルバイトをしようとしていることが僕には理解ができなかった。



「確かにあなたの言う通り、お金は十分にあるわ。あなたの家賃や光熱費、それに食費を出すことも余裕でできる。その気になれば、家具家電込みでこの部屋を買うことだってできるわ。私はお金持ちなのよ。でも、それはただお金があるだけにすぎないの。経済力はない。」



「経済力?」僕はコップをアヤカに渡して、オレンジジュースを注ぐように促した。



「そう。経済力。例えば、年収1000万円で貯金が100万円の人と、年収10万円で貯金が100万円の人、どっちが社会的に信用できると思う?」



「おそらく、後者じゃないかと思う。」



 アヤカはオレンジジュースを一口で飲み干した。




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