グリーン・デイ
それからもアヤカは、ほぼ毎日バイトへ行った。もしかすると、バイト先で好きな男の子でもできたのかと思うくらいバイトに明け暮れ、やがて夜勤の方がお金になることを知り、夜勤のバイトも増やした。
僕は僕で、学校の講義に行き、サークルに顔を出し、そこにいた何人かでスタジオに入って、適当にコピー曲をやって、終わって飲みに行くといった生活を続けていた。
バイトはしない。する必要がなかった。月に12万円ある奨学金で生活費は大体賄えたし、それに家賃の59000円のうち、3分の2はアヤカが出してくれる。光熱費もだ。
それから僕には物欲というものが元からなく、家賃の3分の1を払っても、あとは安い学食での昼食代や、たまに行くスタジオ代や飲み代、それから定期の更新、夕食はアヤカが店で買ってきてくれる。唯一、買うとすれば、文庫本くらいで、今欲しいものといえば、新しい本棚だろうか。
アヤカはそんな物欲のない僕に心底イライラしているようだった。というのも、アヤカの求める男の理想像が、ピーターパンのようにいい歳をした大人が夢を追い求める、所謂「だめんず」らしく、僕はアヤカの求める「だめんず」には程遠いらしい。
まったく、珍しい女に惚れられたもんだと思い、頭を抱えることもしばしばあるが、アヤカのペースに巻き込まれていくのも悪くなかった。逆に居心地の良さを感じ始めていた。