グリーン・デイ





 そんなバイト大好きのアヤカが珍しく二週間、バイトの休みを入れた。かなり無理を言ったらしかった。



 それを聞いたのは早朝5:00のことで、講義のなかった僕は、昨晩、池袋でサークルのメンバーと始発が出るまで飲んでいて、その代償である二日酔いで完全にグロッキー。ベッドに伏せていた。



 アヤカはそのベッドの酒の匂いが染みついた暖かい布団を引っぺがして頭を押さえながら呻く僕に言うのだ。



「旅は道連れ世は情け。」



「どうして江戸いろはがるた?」



 アヤカはそれには答えず、鼻歌を歌いながら僕のスーツケースに着替えや歯ブラシなんかを詰め込んでいた。曲は……確かレッド・ツェッペリンの「Immigrant Song」だ。



「どこか旅行でも行くのか?」



「サンマリノにね。」



 サンマリノ。ああ、それで旅がどうとか言いながら機嫌がいいのか。



 僕は欠伸をしながらアヤカの留守中、何をして過ごそうか考え____いや、今は気持ちが悪いので、考えるのをやめ、しばらく布団にかぶり、寝ることにした。そこへアヤカが僕にのしかかってくる。



「聞こえなかったの? サンマリノに行くのよ!」



 僕は「うー。」とも「んー。」ともとれる返事をし、寝返りを打ったが、アヤカは僕の布団に入り、額と額を合わせてくる。



「何?」



「サンマリノに行くの!」



「いってらっしゃい。」



「何言ってるの? あなたも行くのよ?」



 ああ、そうか。僕もサンマリノに行く____は? サンマリノ共和国?




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