グリーン・デイ





 電車がスピードを緩め、アナウンスが品川駅に着いたことを知らせた。座席へ戻ると、柿の種をばら撒いていたサラリーマンの姿はなく、代わりにスーツケースが座っていた。



「二人で真ん中の席を挟むように座ってたら他に座る人もいないでしょ?」



 そう言ってアヤカがスーツケースを退けて、僕に座るように促した。



「でも、それなら二人掛けのDかE席に座ればよかったんじゃないか?」



「富士山が見たいからここなの!」



 アヤカは周りに聞こえるほどの大きな声で僕にそう言い放ったが、富士山が見えるのは、上りも下りもE席だ。それを今更言うのもあれなので、ホテルに着いてからでも教えてあげようと思う。




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