グリーン・デイ
幻想世界Ⅵ-恋の石と生八ツ橋-
京都駅を出てすぐのロータリーで待っていたのは、レトロな形をした車だった。どうやら、アヤカが新幹線の中で予約をしていたらしく、ロンドンタクシーと言うらしい。まるで、ドイツ辺りの首相が乗っていそうな車で、値段のほうが気になった。
「これ、貸し切り?」
「そうよ。やっぱり京都を回るならロンドンタクシーでないと気分が出ないでしょ? 私も乗るの初めてなんだけど、なかなか良さそうね。」
確かに乗り心地は良かった。いや、怖いくらいに乗り心地が良く、内装もおしゃれだった。これではますます値段を訊くことができない。
唯一、欠点があるとするならば、ドリンクホルダーがないくらいで、しかしスタバやドトールを買っているわけではない。ペットボトルのお茶など、シートの上で転がしておけばそれでいい。余計なことは考えるのはやめよう。今はロンドンタクシーの乗り心地に心を休めながら、外から見える京都の風景に吐息を漏らせばいい。「はー。」とも「ほー。」ともとれる吐息を。