グリーン・デイ
待たせてあったロンドンタクシーに乗り込み、僕たちはまず清水寺へ向かった。清水坂を上り、途中、チープなアクセサリーを売っている若い男を二人で冷やかして歩いた。あんなにチープなものをわざわざ高い値段で京都で買うわけがない。下北沢なら同じ値段で少しはマシなものが買えるはずだ。
清水寺の境内に着き、お参りを済ませ、それから清水の舞台から下を見た。
絶景。これ以上の言葉はなく、高さとその美しさとで思わず足元がすくんだ。
これは、映研の友人から聞いた話だが、ここ清水の舞台を正面から撮りたいと言った映画監督がいたらしい。常識的に考えて、クレーンで撮影することになるのだが、ここ清水寺まで大型車であるクレーンを運ぶことはできない。
そこで考えたのが、舞台に撮影するスペースをイントレ(注:工事現場でよく見る鉄パイプで組み立てられた足場のこと)で建てたらしい。清水のあの高さまでのイントレを作ってまで撮影したかったカットは、今ではドローンを使えば簡単に撮れるだろうが、ドローンでは出せない画面の安定感がその映画にはあったのだと、友人は言う。
僕はその映画を観ていないから、その真意は定かではない。