グリーン・デイ





 地主神社には、二つの「恋占いの石」というものがある。一方の石からもう一方の石へ、目を閉じて無事辿りつくことが出来たら、その人の恋が叶うのだという。もし、誰かに手助けしてもらって辿りつくことができたら、手助けした人が自分の恋のアドバイザーになるという。スピリチュアルや霊媒師の類より、よっぽどシンプルでよくできているなと思う。



 アヤカはその石の前に立ち、言った。



「賭けをしましょう。」



「賭け?」



「そう。私はあなたのことが好き。できれば一緒になりたい。とは言っても、今もこうして一緒に旅をしているわけなんだけど、そういうことじゃないの。私は本当の意味であなたと一緒になりたいの。あなたの子供が欲しい。あなたに看取ってもらうか、私があなたを看取りたい。だから、私はそれをこの石に賭けるの。私が反対側の石にいるあなたに、この手で触れることができたら、私はあなたと一緒になれるって。」



 僕は頷き、反対側の石へ歩いた。周りにも何人かの人がいて、傍でアヤカの宣言を聞いていた修学旅行中の女子高生が面白がって僕たちに注目していた。そのうちの一人から、



「いい彼女さんですね! 私、応援します!」



 そう言われ、僕は顔を真っ赤にして軽く頭を下げた。アヤカが目を閉じて僕の方へ摺り足でゆっくりと歩き出した。




< 63 / 136 >

この作品をシェア

pagetop