グリーン・デイ
「いるー?」アヤカが大声で僕を呼ぶ。
「いるよー!」僕もそれに大声で答えてやる。
女子高生たちは、まるでスイカ割りでもするかのように「右です!」「左です!」とアヤカに指示を送っている。その言葉に釣られて、周りで目を閉じて僕のいる石を目指している人たちも女子高生の指示と同じ動きをしている。
僕の方の石からスタートしている人たちに至っては、女子高生の指示と逆を歩き、ごった返していた。気の毒なことにあの人たちの願いは見ず知らずの僕やアヤカや女子高生によって、叶わぬ恋となってしまうだろう。
その間もアヤカはゆっくりではあるが、一歩、一歩着実に僕の元へ近づいている。「あと1mです!」と女子高生の声援もひと際大きくなり、アヤカを含む、その場で目を閉じた全員が手探りを始めている。異様な光景だった。「バイオハザード」でこんなゾンビを見たことがあるような気がする。
午後三時過ぎの太陽に照らされ、タングステンの赤みを帯びた色に染まる。石のところは生憎、陰になっていて、光は届かないが、日向に負けないくらい輝いているように見えた。
アヤカが僕の胸に飛び込んできた。目を開けたアヤカを僕は両手で強く抱きしめた。
「ただいま!」
「おかえり!」
周りの女子高生は飛び跳ねて歓び、拍手を送ってくれる人もいた。いい街だ。また来たいと思った。二人で。