グリーン・デイ





 パーティーがお開きになると、僕は二次会を断り、一人で駅へ向かった。



 ちょうど定期の更新をしていなかったから、券売機でアパートの最寄り駅までの切符を買い、案内表示板を無視して歩き、電車に乗った。



 窓外の景色は地下鉄の真っ暗闇から徐々に光が差し込むのと同時に地上へと昇っていく。僕はそれを「昇天」という言葉で表現し、その響きの良さを気に入り、心の中でおまじないのようにつぶやくこともあった。「昇天」という言葉がぴったりと当てはまるほど、窓外に伸びる川は太陽に照らされて星空のように輝き、その水の冷たさは電車の中にいても容易に想像できた。



 僕の隣に座っている女性が、さっき焼きそばを険しい顔で啜っていて、見事な歌声を披露していたアヤカであることに気付いた時、彼女はイヤホンをしていた。青い5000円弱ほどで買えるイヤホンで、僕が高校の時に初めて買ったイヤホンと色違いだった。



 そのイヤホンからは微かだが音楽が漏れていた。曲はグリーン・デイの「アメリカン・イディオット」だった。僕も好きな曲で、ウォークマンにも入っている。




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