グリーン・デイ





 そんな勇気のなかった自分が本当に情けなく、惨めに思えた。



 一人の女性を愛することも、幸せにすることもできなかった。



 僕はアヤカに対して何一つ、残してやれなかったのだ。



 それどころか信用さえもできなかった。



 きっとこれは、罠だとどこかで思っていた。ハニートラップなんてされるような身分ではないが、アヤカをどこか見下していたような気さえする。



 人を信じることは難しい。でも、信じようとする心を持つことは簡単だ。そんな簡単なことでさえも僕はできなかったのだ。



 何が幻想世界だ。何がモンスターだ。何が自由だ。



 文学染みた会話で、いい気になって、気取って、周りからよく見られようとして、自分の姿を鏡ではみようとしなかった。愛されていることだけで十分だと思い込んでいた。



 素直になれない、贅沢で、高飛車で、こっちのほうがよっぽどモンスターに近い。




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