グリーン・デイ
どんよりとした梅雨真っただ中のある日の日曜日、僕は出会い系サイトで知り合った一人の女性と喫茶店でお茶をしていた。
その日はちょうど小雨が降っていて、池袋にある喫茶店で、お互い向かい合って座りながら小説の話をした。
彼女の名前を僕は知らない。別に知るのが怖いとかそういうわけではない。ただ、知らないほうが何かとうまくやっていけるし、深入りしなくて済むと思ったのだ。
彼女は出会い系サイトでは「ともちん」と名乗っていた。そして、僕はそのまま彼女を「ともちん」と呼んだ。ただ、人前でその名前を口にするには恥ずかしかった。CMに出ている芸能人を指差して呼ぶのとはわけが違う。出会って日が浅いのに、急に「ともちん」なんて呼べば、きっと馴れ馴れしいと思われてしまうだろうと思ったのだ。
ただ、ここでは「ともちん」と呼ぶことにしよう。