グリーン・デイ
待ち合わせの池袋駅の西口で初めて彼女を見た時、僕は正直言うと、ハズレだと思った。顔の作りはそれほど良くなかったし、痩せ方は不健康そうだった。おまけに、メイクをしなれていないらしく、アイシャドウの色も、口紅の色も、自分には合っていない色だということを知らないらしい。
何よりもファッションセンスがなさすぎた。「この服どこで売っているの?」と思わず訊いてしまいそうなほど、奇抜で、合っていない。髪型もボサボサで、喫茶店までの道中、何度もくしゃくしゃといじっていた。おまけに、ビル・エヴァンスを彷彿とさせる、ウエリントン型のメガネをかけていて、彼女の周りだけ時代が切り取られたような感覚に陥る。
初対面でこれほどまでに、マイナス要素が見つかると、もしかして僕の結婚する相手はこういう女性なんじゃないかという気持ちになる。きっと、結婚生活は驚きの連続で、常に新鮮味に帯びている。片付けもできないような女かもしれないが、それはそれで、散らかった部屋がある意味、芸術を思わせるだろう。
しかし、いくら新鮮味があっても、結局は心なのだ。彼女と一緒に居て楽しいかどうか。僕は全然楽しくなかった。こうして向かい合って話をしても、会話は続かない。就職面接をしているようなもので、額に滲む汗をハンカチで拭くこともできなかった。