グリーン・デイ
店を出る頃にはすっかり雨が上がっていて、夕日に照らされた池袋の街が来た時よりも更に活気づいていた。
僕たちは駅へと向かう途中、少し距離をとって歩いた。傍から見ればただの他人同士だと思う人もいたかもしれない。事実、そうでこの後一緒に食事を行くわけでも、映画を観るわけでもない。今日はもうこれでいい。明日また別の女の子を出会い系サイトで見つければいいだろうくらいにしか思わなかった。
それは彼女に魅力がなかったことも一つだが、それ以上に、僕は彼女と話している最中でも、どこか彼女をアヤカと比べてしまっていたのだ。
アヤカはこういう本は読まないだとか、アヤカはこんな価値観を持っていないだの、アヤカ、アヤカ、アヤカで、頭の中で、目の前のともちんの身体を切り取って、そこにアヤカを貼り付けようと試みた。
ここがまだ幻想世界であれば、きっとそんな不可能さえも可能にできると思い込んでいたのだ。これはある種、マインドコントロールのようなもので、僕は未だに洗脳されているのかもしれない。
でも、それでいい。洗脳でもなんでもいい。それでアヤカがいた証を残せるなら、僕はこの幻想世界で生き延びてやる。