グリーン・デイ





 E席は富士山が見えることをアヤカが知ったのは、ホテルに着いてからだった。アヤカは頬を膨らましながら、「何で言ってくれなかったの!」と僕に抗議した。



「新幹線から見える富士山なんて、何の面白味もないよ。それに、富士山よりも綺麗な景色は探せばいくらでもある。例えば、僕たちが今住んでいる日当たりの悪いベランダからの景色だって、酷いものだけど、それでもその景色を眺めている時間を誰か大切な人と共有できる今、この瞬間のほうがよっぽど価値のあるものだと思うんだ。」



「なるほどね。それってつまり、何かを見て綺麗だなって思う心は、大切な誰かと一緒にいてこそ生み出されるってことよね? どんなにおいしい料理でも、一人で食べるのとみんなで食べるのとでは違うみたいに。」



「そうだな。」そして僕はアヤカにある約束をした。




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