気になる彼は、左利き!?
「でも、嬉しかったです。
池上さんもとても優しくて私のために
無理して両親に会ってくれました」
凄く緊張しただろうし
嫌な気持ちになったにも関わらず
私との交際を真剣に説得してくれた。
彼の人柄は、母親の考え方を変えてくれた。
「裕ちゃんが優しいのは、当たり前よ!
昔から誰にでも優しかったんだから」
当然とばかりに言う梨乃さん。
だが握られた拳は、ガタガタと震えていた。
「だから、分かっていたのよ。
裕ちゃんは、誰にでも優しい。だから
私にも優しくてしてくれてたんだって。
それが恋愛感情じゃないのも……」
「でも、諦めたくなかった。
例え今は、無理でもこれからアタック続けていれば
その内に振り向いてくれるんじゃないかって……
だから諦めなかったのに」
涙を流しながら必死に言ってくる。
梨乃さんの想いは、本気だ。
ずっとそれでも諦めて来なかったのは、
それだけ本気だったのだろう。
だけど、私だってその気持ちに負けてられない。
梨乃さんの方が想いか強いかもしれないけど
私だって池上さんが好きなのだ。
「その気持ちは、痛いほど分かります。
でも、私も池上さんが好きなんです!!」
真剣に想いを伝える。
「さっきの話聞いてたの!?
私は、あなたよりずっと裕ちゃんの好きなの。
だから、さっさと別れてよ!!?」
泣きながらそう言われてしまう。
梨乃さんの気持ちを考えると辛い。
でも、それだけは……出来ない。
私も池上さんが好き。
前よりも、もっと池上さんのことが好きになった。
だから例え梨乃さんでも譲れない。