気になる彼は、左利き!?
「……それは、無理です」
「何で!?」
「あなたから言われたからって簡単に
別れる方が、池上さんにも梨乃さんにも
失礼だからです」
そんな簡単に別れられる恋は、恋じゃない。
本気で好きだからこそ傷つき
泣きたくなるぐらいジタバタともがくのだ。
「何よ……それ?」
「私は、最初池上さんに惹かれたのは、
同じ左利きだったから親近感からでした。
でも、それをきっかけに話すようになり
池上さんの誠実さや優しさに触れて
もっと好きになりました。
そりゃあ、梨乃さんに比べたら道機が不純かもしれません」
「でも、池上さんに対する想いは、
負けたくありません。
いえ、もっともっと好きになります。
だから池上さんとの交際を認めて下さい。
お願いします」
私は、深々と頭を下げた。
言いたいことは、若干無茶苦茶だが
今の私には、それが精一杯だった。
届いて……この気持ち。
すると後ろから
「俺からも頼むよ。梨乃」
池上さんの声が聞こえてきた。
えっ!?
慌てて頭を上げて振り返ると
やっぱり池上さんだった。
「裕ちゃん……!?」
「梨乃。梨乃の気持ちにちゃんと向き合えなかった
俺が悪い。それは、すまなかったと思ってる。
でも、梨乃の気持ちは、嬉しかったけど
それ以上に俺は、一ノ瀬さんが好きなんだ。
だから交際を許してほしい。頼む」
池上さんまで頭を下げてきた。