気になる彼は、左利き!?
すると梨乃さんは、涙を拭きながら
「こんな風に見せつけられたら…諦める以外
選択肢がないじゃない。
いいわよ……別に。私は、この人より可愛いから
もっと裕ちゃんより優しくてカッコいい人見つけるから。
そうなって後悔しても知らないから」
強気な態度で言ってくる。
彼女の精一杯の強がりだろう。
梨乃らしい……。
「あ、ありがとう…ございます」
「ありがとう……梨乃」
「言っておくけど、すぐに別れたら許さないから。
そんなことしたら私が馬鹿みたいじゃない。
いい?ちゃんと結婚までしなさいよ!?
わ、私は、帰るから」
必死にギャーギャーと騒ぐと行こうとする。
「あ、梨乃さん!!」
慌てて呼び止める。
「な、何よ……?」
「交際を認めてくれてありがとうございます」
改めてお礼を伝えた。言いたかったから
そうしたら梨乃さんは、頬を赤らめながら
背中を向ける。だがボソッと
「この前は……言い過ぎたわ。ごめんなさい」
そう言うと行ってしまった。
彼女の精一杯の謝り方だろう。
何だが嬉しくなり胸がポカポカと温かくなってくる。
梨乃さんは、悪い人じゃない。
ただ自分の気持ちに素直な人だった。
梨乃さんを見送っていたら池上さんが
「あの……一ノ瀬さん。ごめん。
度々嫌な思いばかりさせて……自分が情けないばかりに」
申し訳なさそうに謝ってきた。