心に届く歌
「……鍵?」
ティラン伯爵のお屋敷で探したのを思い出しながら、シエルを探していると。
平屋の家の1番奥に、鍵のかかった扉があった。
鍵は南京錠と呼ばれる立派そうなもので、持って揺らしても開くものじゃない。
「ドク!」
「お嬢様、見つかりましたか」
おばさんが縛られていた広い空間に行くと、
おばさんだけではなくおじさんまで縛られていた。
おじさんの鼻からは血が出ていて、恐らくドクに抵抗した所殴られたのだろう。
「鍵がかけられた不審な扉を見つけたわ。
でも鍵が開かないの」
「お任せくださいお嬢様」
わたしはドクを鍵のかかった扉の前に連れて行く。
「確かに立派な鍵ですね。
何かを隠したい気持ちが見え見えです。
ですが開けるのは簡単です」
ドクは持っていた治療道具の入った鞄から、針金らしきものを取る。
それを鍵穴に差し込み、カチャカチャといじる。
すぐにカタンと開いた音がした。
「さすがドクね」
「鍵開けはわたくしの趣味ですから」
昔は医者になる前、鍵をなくし開かなくなった金庫を依頼され開けていたというドク。
その後医者の資格を取り現在のドクが出来たのだから、不思議なものだ。