心に届く歌
「シエルっ!!」
懐中電灯を投げ捨て、そっとシエルの頭を抱き上げる。
シエルはあの雨の日と同じく、頭から血を流して浅い呼吸を繰り返していた。
「ドク、早く止血を!」
「はい!」
ドクが鞄を開け、消毒液とガーゼと包帯を取り出す。
「少し沁みますが」
消毒液をガーゼに染みこませ、傷口に当てる。
も、シエルは何の反応も示さなかった。
「体温もかなり低下していますね。
早くしなければ命の危険性があります」
包帯を巻きながらドクがシエルの状態をわたしに教えてくれる。
車に行けば、あったかいお茶と冬物の上着がある。
「行きましょうお嬢様」
「ええ!」
わたしは唇を噛むシエルのご両親を横目に、セレーネ家を飛び出した。