心に届く歌
「うん。
熱も出ていないし、だいぶ体もあったかくなったね。
今寒くない?」
こくりと頷く。
そして今僕がいる場所が揺れているのに気付いた。
「ここ……どこ、ですか…?」
「車の中だよ」
「どこに…向かうんですか…」
「ひとまず…ドクの診療所かな」
ドク。
熱が出ていたけど覚えている。
眼鏡をかけた白髪の男性が、ドクだというのを。
人の名前と特徴を覚えるのは、昔から長けている。
そうしないと……。
「まだ着きそうもないから、眠っていても良いよ」
彼女が笑う。
酷く嬉しそうな、安心したような笑みを浮かべて。
「大丈夫。
あなたを傷つける人は、どこにもいないから」
不思議だ。
エル様の言葉は不思議と安心感がある。
自然と瞼が重くなってきて、僕は意識を飛ばした。