心に届く歌
身を乗り出した僕は、目を見開き驚いた。
「え…………?」
ベッドの脇、エル様が絨毯の上で横になって眠っていた。
ドクさんは苦笑いを浮かべながら、持っていた毛布をエル様にかけた。
エル様は絨毯の上だというのに、幸せそうに眠っていた。
「……絨毯の上で寝ているなんて、そんなの、僕のせいじゃないですか」
「何故そう思うのです?」
「僕がベッドを借りてしまっているから、エル様の寝る場所を僕が奪ってしまっているから、エル様は絨毯の上で寝てしまっているんだ。
ごめんなさい……僕帰ります」
僕はエル様を起こさず、踏まないように立ち上がり、ドクさんの横を通り部屋を出ようとした。
「お待ちなさい。
まだシエル様に告げていない出来事があります」
扉を開ける寸前、僕に背を向けたまま立つドクさんが言った。