心に届く歌







身を乗り出した僕は、目を見開き驚いた。




「え…………?」




ベッドの脇、エル様が絨毯の上で横になって眠っていた。

ドクさんは苦笑いを浮かべながら、持っていた毛布をエル様にかけた。

エル様は絨毯の上だというのに、幸せそうに眠っていた。




「……絨毯の上で寝ているなんて、そんなの、僕のせいじゃないですか」


「何故そう思うのです?」


「僕がベッドを借りてしまっているから、エル様の寝る場所を僕が奪ってしまっているから、エル様は絨毯の上で寝てしまっているんだ。

ごめんなさい……僕帰ります」




僕はエル様を起こさず、踏まないように立ち上がり、ドクさんの横を通り部屋を出ようとした。





「お待ちなさい。
まだシエル様に告げていない出来事があります」




扉を開ける寸前、僕に背を向けたまま立つドクさんが言った。





< 113 / 539 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop