心に届く歌
「告げていないこと……?」
「はい。
それを聞いてから出て行くなどと言ってください。
わたくしにはあなたに事を伝える仕事がありますので」
ドクさんが振り向き手招きをする。
僕は扉から離れ、ドクさんに近づいた。
「座って話しましょうか。そこに座ってください」
「はい……」
広いエル様の部屋にあるソファーとテーブル。
座っている所を見たことはない。
座ってみると、かなりふわふわで座り心地が良かった。
「お茶を飲みながら話したい所ですが、あなたは早くしてほしいでしょう。
それとも飲みますか?」
「いえ……話してください」
僕なんかには不似合いの場所。
逃げたい気持ちを何とか押さえ込み、僕はドクさんの話を聞いた。