心に届く歌
「…少し話は変わりますが、わかりましたか?」
「え?」
「お嬢様の心に、あなたが火をつけたことに」
「……わかりませんでした。
エル様が絨毯の上で眠っているのは、僕がベッドを奪ってしまったからだと思います」
「では質問を変えましょう。
何故お嬢様は眠っていると思いますか?」
「……ノール村とこの家の往復じゃ、疲れるなんてものではないからでしょう」
「まぁそれもひとつの理由だと思いますね。
しかし、本当の理由は、お嬢様が寝不足だったからです」
「え?」
「その様子だとご存知ないようですね。
シエル様がまだノール村に帰る前、
熱を出していたのを覚えていらっしゃいますか」
「……覚えてます」
「あの夜、お嬢様は寝ずにあなたの額に乗ったタオルを変えていたのですよ」
ドクさんの言葉に、俯いていた顔を上げる。