心に届く歌






紹介したい人がいる。

嫌な予感しかしない。



きっとまた新しい許嫁(いいなずけ)を見つけたんだ。

次期国王の旦那に相応しい、誰の目にさらしても可笑しくない婿養子を。




今までだって許嫁は大勢いた。

それこそ5歳ぐらいからずっと。

「未来の旦那様よ」ってお母様に限らず、お父様やメイド長に紹介され続けてきた。




だけど現在19歳になったわたしに許嫁も未来の旦那様もいない。

大勢いた個性豊かな許嫁は皆、わたしの元から次々と去っていく。

“あんな国王に相応しくない賑やかな女などと結婚したくない”

そんな失礼極まりないことを最後に吐き捨て、許嫁は去っていく。

それなのにお父様もお母様もメイド長も懲りずに見つけて連れてくる。




“国王に相応しくない賑やかな女”を支えられる、素敵な人を見つけるために。

日々仕事の合間に許嫁を見つけてくる。




きっとわたしは一般市民のように、素敵な恋愛など出来ない。

もし見つけてきたとしても、反対されてそのまま破局。

実際そうなったことはないけど、きっとそうなるに決まってる。




わたしは自由に恋愛が出来ないまま、

お父様やお母様やメイド長が見つけてきた許嫁と結婚して、

次期国王になって忙しい毎日を送って、

101代目国王となる子どもを産んで、

子どもが二十歳になったら国王の名を譲って、

ありあまるお金と一緒に残りの人生を不自由なく過ごすんだわ。




きっとそうなる。

お父様とお母様がそうだったように。

わたしもきっと、そうなるに決まってる。





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