心に届く歌
「初めて現れたシエル様は、ずっと狭い世界で生きてきたお嬢様にとっては興味深いものだったのでしょう。
あなたをお友達だと言い、何度もあなたの名前を口にした。
初めてのお友達が高熱で苦しんでいたら、寝不足で看病したくもなるでしょう」
「そう、なんですか……?
僕にはそういう経験がなくて……」
「お友達でなくても、大切な人であれば身を挺して守り、苦しんでいるのであれば傍にいたいものですよ」
『傍にいてあげるから』
エル様が言っていた。
それに僕は…酷く安心した。
初めてだったから…僕にあんな優しい言葉をかけてくれたのは。
「お嬢様はソレイユ家のひとり娘でありますから、いずれお父上の跡を継ぎ、国王になる運命は変えられない。
反発する者が多い中、準備は着実に進んでいます。
お嬢様はシエル様と同じ19歳ですので、来年にはお嬢様は国王になっております。
シエル様、どうかお願い致します。
お嬢様から、あなたというお友達を奪わないでください。
お嬢様の傍から、離れないでいただけますか」
僕は何も言えなかった。
だってあまりにも現実離れしているから。
僕みたいな奴隷身分の奴が、正統王位継承者であるエル様の傍を離れないで、なんて。
「シエル・セレーネ様」
「はっはい」
「ソレイユ王国100代目正統王位継承者
エル・ソレイユ様の最も近い側近になりませんか。
いわゆる、“執事”に」