心に届く歌






「いつからか覚えていないの?」


「……気付いたらって感じで…」





気付いたら

相当前から貧血の症状があったのに




「辛かったね……」


「…同情はいらないです……」


「これからゆっくり治していこ?
ドクはかなり優秀だから、信頼して良いわよ」


「……はい」


「ゆっくり休んでいて良いよ。
睡眠取ると良くなるかもしれないよ」


「……あの」


「うん?」


「……たまに…この辺りドキドキするんですけど…。
これも、貧血の症状ですか……?」




シエルが指で示すのは胸の辺り。




「……ドクに診てもらおうか。
わたし医者じゃないから、詳しくなくて。

胸の辺りなら早めに診てもらった方が良いかもしれないね」




こくりと頷いたシエルは、眠そうに瞬きをして、小さく欠伸をする。




「眠たいのなら寝ていて良いよ」


「でも……」


「大丈夫。
シエルの睡眠を妨げる人はいないから。

わたしが傍にいてあげるから、ゆっくり寝て良いよ」





シエルは頷くと、わたしがかけた毛布を目元まで上げ、瞼を閉じた。

次第に寝息が聞こえてきて、わたしはほっとする。





寝不足で起こされることもある貧血。

シエル、よく眠れていないのかな。

わたしの傍に来てから、よく眠るようになったから。




「大丈夫だよシエル。

あなたを傷つける人はいないし、
あなたの眠りを妨げる人も、
あなたを罵る人もいないよ。

わたしを信じてみてね、シエル」







何故かわたしの言葉なのに、わたしが安心している。

シエルが傍にいることが、こんなにも嬉しくて幸せ。




どうしてだろうね。シエル。






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