心に届く歌







眠っているシエルの横顔を見ながら、わたしはドクに内線電話で来てもらうよう言った。

出て行ったばかりなのに来させることを詫びると、ドクは柔らかな口調で

「気にしないでください」と笑ってくれた。




天才医師が開いている診療所なだけあって、いつもドクは忙しい。

合間を縫ってわたしの執事としての役目を果たしてくれるけど、両立が難しいのは事実。

現に本業はあくまで医者のため、そっちにかかりっきりのことが多い。




そう考えると、シエルが執事になってくれたのなら、ドクの負担も減る。

わたしの執事を辞めたからと言って、会えなくなるわけじゃない。

シエルの貧血も診てくれるって言っていたし。




改めてシエルにお願いしてみよう。

わたしの執事になって、と。

そうしたらシエルはずっとわたしと一緒にいられる。




「……ふふっ、何だか嬉しいわね」



わたしはクスクス笑った。

最近楽しくって仕方がない。




本当、どうしてだろう?





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