心に届く歌
「……エル、様?」
「シエル。起きたの?」
ドクに来るよう電話をかけて間もないのに、シエルが目覚める。
随分起きるのが早い。
「ねぇシエル。ちゃんと寝てる?」
「…………」
上体を起こしたシエルに尋ねると黙り込んでしまった。
そして自分の手でこめかみ部分をグリグリと押す。
「シエル。頭痛い?」
「……いつものことですので…」
痛いのか顔をしかめるシエル。
わたしはソファーから立ち上がり、シエルの座るソファーの近くにしゃがみ込んだ。
「シエル。
具合悪いのなら横になっていて良いよ?」
「悪くないです……いつものことなので」
「駄目だよ。
ドク呼んだから横になってて?」
「……わかりました」
わたしに反論せず、シエルは横になる。
はだけた毛布をかけると、ノック音が聞こえた。
「お嬢様、わたくしです」
「入って」
「失礼致します」
入ってきたドクは医療道具の入った鞄を持っている。
わたしはドクにシエルの診察を頼んだ。