心に届く歌
「……恐らく、頭痛も動悸も貧血が原因でしょうな」
診察を終えたドクはカルテらしき紙に書き込みながら
わたしに教えてくれた。
「ドウキ?」
「胸がドキドキ鳴っているのが自分でもわかることを動悸と言います。
動いたりすると貧血は動悸や息切れが発生しますから。
他にも眩暈・立ち眩み・頭痛・だるさ・肩こりなどが起こりますね」
「ねぇシエル。どうしてあなた病院に行かなかったの?」
横になるシエルに聞くと、シエルは黙り込んだ。
本当……自分のこと話さないんだから。
「鉄分が多い食事や、睡眠などを多くとると良いでしょう。
シェフに伝えておきますので、今夜は鉄分が多いお食事となるでしょう」
「……シエル、ご飯食べられる?」
不安になって聞くと案の定首を振られる。
「お食事を摂ることが難しいのであれば、点滴などで補いましょう。
ともかくシエル様、ぐっすり出来る限り深くお眠りくださいね」
「……はい…」
「それではわたくしはこれで」
「わざわざありがとうねドク」
「……待ってください…」
シエルの小さな声が聞こえる。
人混みであればかき消されてしまいそうなほど小さな声だ。
声質は良いと思うから、もっと大きな声を出せば良いのに。