心に届く歌







「どうされましたか?シエル様」


「……どうして、僕なんかのために、そこまでしてくれるんですか?
僕なんて…別に…生きていたって、意味ないのに」




眩暈でもあるのかぎゅっと目を瞑りながら言うシエル。



わたしはシエルが横になっているソファーに近づき、

その襟元を掴みそのまま立たせた。

驚いて口が少しだけ開いているシエルの頬を、わたしはそのままひっぱ叩いた。




「馬鹿ッ!!」


「っ!」


「何でそんなこと言うわけ!?
世の中に生きていて悪い人間なんていないし!!」


「…………っ」


「そんなふざけたこと2度と言わないで!2度と!!

あなたは、シエルはわたしにとって初めての同い年のお友達なの!
シエルが死んじゃったらわたしが絶対泣く!!

生きる意味がわからないのであれば、わたしを生きる理由にして」


「え……?エル、様を?」


「シエル。…わたしの執事になりなさい」


「でもっ………」


「わたしがシエルの生きる理由になる。

わたしやドクがシエルに優しくする理由が知りたいなら、
わたし達のことを見てなさい。

絶対に理由がわかるから」


「…………」


「あなたは今から、
ソレイユ王国100代目正統王位継承者
エル・ソレイユの第1執事。

それがあなたの肩書きであり、
これからはそう名乗りなさい」




胸ぐらを掴んだまま言うと、

シエルはこくりと頷いた。

それからわたしは、ぎゅっとシエルを抱きしめた。




「叩いてごめん。痛かったでしょ?」


「いえ……大丈夫です」




シエルはわたしを抱きしめることはしないまま、呟いた。





「……慣れてますから」





わたしは何も言わず、ぎゅっとシエルを抱きしめた。






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