心に届く歌







☆☆☆




その日の夜。

シエルは夜ご飯を前に首を振った。




「いらないです……」


「少しでも食べないと薬飲めないよ」




ドクが処方してくれた造血剤。

3食欠かさず飲むよう言われているが、飲むのは食後。

一口でも食べさせなくては。




「シエル~」


「いらないです…ごめんなさい」


「薬飲めないよ?
眩暈とか頭痛酷いんでしょ?」




離すタイミングがわからず、ずっとシエルを抱きしめていると。

シエルはわたしを離すことなく、わたしの腕の中で眠ってしまった。

やっと離すタイミングを見つけ、そっとベッドの上寝かせたのは良いものの。

数分後シエルは目覚めてしまい、でも眩暈があるのか目は閉じたままだった。

目を閉じながらこめかみ部分もグリグリ押していたので、頭痛もあるのだとわかった。




「シエル。
ご飯食べて薬飲んで寝てな?」


「……食べたくないです…」


「戻しちゃっても良いから一口でも!ね?」




それから同じようなやり取りは10分ほど行われ、

とうとうシエルが折れた。

食事の際だけやけに頑固だ。





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