心に届く歌
「……お母様、お昼に部屋にいれば良いって言っていたわよね」
わたしは独(ひと)り言(ご)ち、教科書を机の上に広げたまま、部屋を出た。
まだお昼まで1時間ほどある。
どこかに行っても家の中なら歩いても大丈夫なはず。
廊下を歩くと、家に仕えるメイドや執事に多く出会う。
皆はわたしを見つけるとすぐに頭を下げ道を開ける。
わたしは開けられた道を堂々と通り目的の場所に向かう。
「ドク?いるかしら」
ノックもなしに目的の場所へ向かい扉を開けると。
年季の入ったロッキングチェアに座りドクが本を読んでいた。
「これはこれはお嬢様。
お勉強ではなかったのですか?」
「つまらなくて抜け出してきたわ」
「いけませんよお嬢様」
わたしを軽く叱るけど、絶対に『ソレイユ王国の次期国王なのですから』と言わない彼。
名前はドク。
ソレイユ王国1番腕の良い医者であるからドクと呼んでいる。
本名は出会った時名乗られた時あったけど、忘れてずっとドクと呼んでいる。